結婚をめぐる問い

読みました。「結婚」橋本治
橋本治さんを認識したのって、30代に入ってからで、「桃尻娘」の衝撃的なデビューとかを知らない世代で、「わからないという方法」が最初に読んだ本だったかなぁ。キャッキャッしてる女子、現代の結婚や婚活が描かれているこんな小説も書くんだって思った!その時々の社会の状況を見て変化し続け書ける多彩な人だったのだなぁと思った。もう新しい世界が描かれることはないのですね・・
 恋愛・結婚=競争・序列の世界

この本の主人公は、〝早く結婚しないといけない〟という思いにとりつかれて焦るけど、その結婚は一向に近づかない倫子、28歳。倫子は、結婚というゴールに到達するためには、必要な条件があり、条件に合う人を探す・見つける・結婚式をするのが「結婚」と倫子は思っている?思わされている?でもそうなのか?とも思ったりしている。就職活動はうまくいったけど、結婚はうまくいかない。何言ってるの?という周りの友達は、あっさり結婚していく。 

 

わたしは、結婚するとか、できるとか、誰かと付き合うとか、そういうことを考えることは、自分の人生の中にはないんだろうなーと、20代までは、思っていた。
恋愛は、こうしたら可愛く見えるという受け答えとか振る舞いが自然にできちゃうような人たちができるものだと思っていた。自分のような他愛のない世間話も、意味のない会話もできないし、何が面白いかわからないことで手をたたいて笑ったりもできない人には関わらない世界。連れていかれた合コンの2時間は、ひたすら評価の眼差しにさらされるのが辛い。目の前の人が自分のことを置物のように思っているということを感じながら、気まずい時間を過ごす。
 
「競争」のように見え、そこに入れないし、入りたいとも思わない・・。条件のいい人(背が高いとか、収入とか、シュッとした感じとか)をお買い物するかのような・・。
この本にも、私にとっては違和感しかない世界が描かれているが、これが恋愛で結婚。レースを勝ち抜くように「結婚」を手にいれる。異性愛者の女性はみんな、シュッとした爽やかな男性が好きなわけではないのに、明らかにこういう人がいい人という基準があり、その条件の中でしか人を判断しないというえげつなさ・・。
私はシュッとした、爽やかな男の人は寒気がするほど苦手・・みんながイケメンという人が本当に苦手。(かっこよすぎて恥ずかしいとかではなくて、生理的に無理!という感じ)
そうした多様な価値基準はない世界が恋愛・結婚の世界と思ってた。逆にそういう基準に乗っからないわたしも恋愛の世界に行く人ではないと思っていた。そんな観念があるようにも思う「恋愛」と「結婚」。その枠組みを外したら楽になれるのだと実体験としてわかったけど、それが結婚なんだとみんな思って、その中で、うまく進んで行く人も、はじかれる人もいる。
「結婚」とはこうあるものの中で倫子は彷徨う。
結婚って何?と言っている間に周りが結婚する 
結婚しよう!
でも、結婚って何?と倫子は考え始める。
私も32歳の時に「結婚」ってなんでするんだろ?と思ったわ・・。それを聞いても、中二病的な問いのように受け止められるだけだった。どうして結婚するのか?は考えず、最初から結婚するもんだと思って結婚していくものかもしれない。
私の場合は、結婚するなんて想定にはなかったため、自分のライフデザインもかっちり決めてなかったから(何才までに子どもをうむ!とか)、30代過ぎても大して焦りもしなかった。気負わなくてもいい、シュッとしてもいないモリソン知り合い、暮らして1年半が経ち、「結婚」しんの?という周り(親)の見えないプレッシャーみたいなのを感じたり、結婚してしまった方が親戚縁者や親はわかりやすいのだろうなと思った。
でも、一緒に暮らしていたら、もはや結婚しているようなものである。結婚がしたいわけではなかったため、わざわざ「結婚」という手間のかかる手続きをこの日にやるってのはなんだろう?結婚とは「家と家の結びつき」なんていう考え方ではない。わざわざ「結婚」をどうしてするんだろう。
結婚そのものをめぐる問いは世の中にはない。
どうやってみなさん結婚することを決めるんだろねって素直な問いに、なんでだろうねと答える人よりも、「あかねちゃんは結婚したいのね」と、マリッジブルー的な悩みを抱えていると思う人ばかりで、そうじゃないんだってば!と思った。
 
倫子や私のようななんで結婚するの?って考えないでも結婚はできてしまうものなのかもね。
倫子は最後の最後に、「結婚」と「人生」を別々に考えていた!!ということがわかり、自分の悩みが氷解する・・
そうか人生か!と思った倫子は、今度は、自分探しという方向に向かうのかと思わせて終わった。結婚も自分も、どこかにあるものではないのかもねぇと倫子を見て思った。
 
異性愛での「結婚」がテーマで、倫子の結婚しないといけないという思いの発端は35歳を超えると卵子が老化するという事実を知ってのこと。パートナーの子どもを出産するという想定でのことだったんだが、ここに同性愛者である主人公が描かれたら、どうだったかなぁと思った。
「結婚」 橋本治 
https://www.amazon.co.jp/結婚-橋本-治/dp/4087715663