「容疑者は職を転々としていた」ってフレーズをよく聞く。「職を転々とすること」頼るべき縁がないという不安、弱さを感じさせ、だから、事件を起こしたんだよねって思わせる報じ方だと思う。
世の労働市場では、職歴が多いのは不利になるらしい。
私の周りは職歴多い人しかいない気がしますけど・・。
職を転々とするのがデフォルト
現在仕事は8個目の仕事??
大学卒業後1つ目の仕事。本屋のアルバイト1年半
NPO法人の常勤職員 6年
発達障害者の就労移行支援事業所 週4勤務の人 3年
&NPO法人の仕事も業務委託でやる。
中間支援NPO 10ヶ月
妊娠・出産
元いた発達障害者の就労移行に戻るも半年で退職。
この夏からは、生活困窮者支援のNPO法人の事務局と小児医療に関するNPO法人の事務局。
職を転々としている37歳女性。こんな履歴書。
何をして食っているかわからない大人との出会い
2005年、大学生の頃に、NPOや社会起業家という人たちがいるんだと知った。何枚も名刺を持っている大人、何をして食ってるかわからない大人にたくさん出会った。その頃はパラレルワークとか、月3万円ビジネスとか、ノマドワーカーなんて言葉もなかったけど、すでにそんな人はたくさんいた。
NPO法人は、ある人を月収20万円オーバーで雇うということができないという組織も多い。だから、月10万円でお願いする・・専門性(会計とか、デザインとか・・)やプロジェクトで切り分ける。複数の収入を得るそうしたサバイバル精神豊かな人がたくさんいて、働き方はいかようにでも考えられるということを学んだように思う。
20代の頃、仕事の回し方を覚え、自分もかつて出会った大人のような働き方にしたいなぁとぼんやり思ってた。1つの組織にいた方が圧倒的に稼げるし、効率はいい。1つの組織じゃ不安、危ういと20代の後半に思っていたように思う。
自分は何でお金をもらうのか
会計とかデザインのようなわかりやすい専門職でもないのに、私になんかあるか?と思っていた。
私が好きでやりたいことは、図書館や本の世界のこと。図書館のことで稼げるようになろうとか、自分の人件費を稼ごうなんてことは思わなかった。
やりたいことで稼がず、一見関係ないNPO法人の世界にいた方が、巡り巡って自分が心を置く図書館の世界をもっと楽しくできるような機会や人や組織に出会えると思った。
最初のNPO法人での仕事は、コーディネーターだった。
その時、組織と組織をつなぐ、調整、全体を把握することとか、プロジェクトマネジメントとかが、自分の得意、できることなんだと自覚した。やりたいことを探すのではなく、求められることで働けばいいのかと思って、履歴書をつくるような転職活動もせず、流れ着くように働く先を見つけている。
今は一つのNPO法人は非正規雇用、一つのNPO法人は業務委託。そして時々ごくわずか個人でも仕事をもらうというパラレルワーク。
この道一筋でなくてもいい
「終身雇用が崩壊」という日本型の雇用の形が崩れている・・ネガティブに報じられる。かつての日本型の雇用をよかったものとする。「この道一筋」とか「一つのことに生涯を捧げる」ことを良いことと捉える傾向がある。
毎月の稼ぎは決まってる、ボーナスも手当てもある。
何年後にお金がいくらあるか予測ができる、だから家を建て、車を持ち、子どもは二人・・
そんな幸せのモデルをつくり、それを目指して、働きお金を稼ぐ。それが日本社会の発展だったと誇る。
終身雇用が主流の社会は、翻せば、変わりたい人には、変わらないことを求める圧力にもなり息苦しい社会ではないかな。
終身雇用じゃないからラッキー
終身雇用じゃない方が生きやすいわって言う人もいると思う。いや、だから企業は人を使い捨てたらいいということではなくて・・労働問題への対処、人権を守る雇用環境をつくるのは当たり前なんだが。
本人が自由に選べるバリエーションがあるというのは良い面もあるということ。
職能で切り分けて、自由に転籍するような人々、転職歴が多い人がもっと主流になるといいなと思う。
社会に放たれてしまうから、わかる自分の姿も、発見もあると思う。それが生きてく愉しさじゃないのかなぁ。
「一つのところで働きなさいとか、安定した仕事を」「転職歴が多いからどうのこうの」なんて言われることが耳障りな人は、ハイハイと聞いて、不安定さを誇っていたらいいのだと思う。
私には1つのところで働くのが経済的に安泰でも精神的には安泰ではないように思えるためにパラレルワーク(複数のキャリア、仕事を持つこと)を選んでる。ゼロか100しかない世界の方が脆弱さがあるように思うんだがなぁ・・。